北海道看護大学の根本昌宏教授がテレビ東京系「ガイアの夜明け」に出演されました。
地震大国と呼ばれる日本において、揺れそのものによる被害だけでなく、避難生活の中で失われる「災害関連死」が深刻な社会問題となっています。
この課題に真っ向から向き合い、寒冷地における命の守り方を提唱し続けているのが、根本昌宏教授です。
本記事では、根本昌宏教授のこれまでの歩みと、私たちが知っておくべき「生き残るための知恵」を詳しく解説します。
根本昌宏教授とは|防災研究者として注目される理由
根本昌宏教授のプロフィールと経歴
根本昌宏教授は、日本赤十字北海道看護大学の教授であり、同大学の災害対策教育センター長を務める、寒冷地防災学と薬理学のスペシャリストです。
根本昌宏教授は水戸市の出身で、1992年に北海道医療大学薬学部を卒業後、同大学院で薬理学の博士号を取得されました。
1999年の日本赤十字北海道看護大学の開学当初からスタッフとして加わり、現在は看護薬理学領域の教授として教鞭を執っています。
根本昌宏教授のキャリアにおいて大きな転機となったのは、2002年のロンドン大学セントジョージ病院生理学教室への留学です。
ここで培った生理学的な知見は、後の「寒冷時における人体への影響」という研究テーマの土台となりました。
2015年からは災害対策教育センター長として、実証的な災害対策の普及に尽力されています。
北海道看護大学での研究活動
北海道北見市という厳しい寒さを活かし、冬期の停電・断水時における避難所環境の改善や、低体温症の予防に関する実践的な研究を行っています。
根本昌宏教授が拠点とする日本赤十字北海道看護大学は、オホーツク圏に位置し、冬には厳しい寒さに見舞われます。
この立地を逆手に取り、根本昌宏教授は「寒冷地の大災害に対応する避難施設の展開手法」について研究を重ねてきました。
特に、冬の避難所(体育館など)における「底冷え」が、どのように心血管系や呼吸器系に負担をかけるかを数値化し、科学的なエビデンスに基づいた防災提言を行っています。

研究成果は「日本雪氷学会」や「避難所・避難生活学会」など、多岐にわたる学協会で高く評価されています。
日本赤十字社との関わり
赤十字の理念に基づき、地域社会への貢献や国際的な救急法普及活動に加え、災害救護における最新の装備検証を担っています。
根本昌宏教授の活動は研究室の中だけに留まりません。
日本赤十字社の一員として、ハイチ地震(2010年)の救援や、ガーナでの救急法普及といった国際活動にも携わってきました。
また、日本赤十字看護大学附属災害救護研究所の客員研究員も兼務しています。
日赤の救護班が使用する装備が「真冬の現場」で本当に機能するかどうかを検証する役割も担当。
根本昌宏教授は「人の尊厳を守る災害対策」を掲げ、単に生き延びるだけでなく、避難者のプライバシーや衛生状態をいかに維持するかという視点を大切にされています。
根本昌宏教授が研究する「災害関連死」とは
災害関連死の定義と問題点
災害関連死とは、地震などの直接的な外傷ではなく、避難生活による疲労や持病の悪化、ストレスなどが原因で亡くなることを指します。
根本昌宏教授は、この「防げたはずの死」をゼロにすることを研究の究極の目標としています。
災害関連死は、公的に認められれば弔慰金の対象となりますが、認定の基準は自治体によってバラつきがあるのが現状です。
根本昌宏教授は、不適切な避難所環境が血栓症(エコノミークラス症候群)や誤嚥性肺炎を引き起こすプロセスを指摘し、社会全体でこのリスクを認識する必要性を訴えています。
能登半島地震で注目された災害関連死
2024年の能登半島地震では、厳しい寒さと断水が重なり、避難所での体調悪化による災害関連死が相次いだことが大きな課題となりました。
石川県輪島市や珠洲市などでは、地震直後の直接死を上回るペースで関連死の疑いが増加しました。
根本昌宏教授は、この状況に対し、「冬の避難所は体育館の床の冷たさが致命的になる」と警鐘を鳴らし続けました。
実際に、氷点下に近い体育館で雑魚寝を強強いられる環境は、高齢者にとって過酷極まりないものでした。
根本昌宏教授は、キャンプ用の寝袋や段ボールベッドの迅速な導入が、いかに命を守る直結するかを現場の状況に即して解説されています。

いつまで続くか分からない避難生活から受けるストレスに加え、物理的な体へのダメージ。さらにご高齢であれば、その辛さは想像をはるかに超えるでしょう。いち早く避難所用の物資が配備されることを願います。
なぜ避難生活で命が失われるのか
寒さによる血圧上昇、トイレを控えることによる脱水と血栓の形成、そして睡眠不足による免疫低下が連鎖することで命が失われます。
根本昌宏教授の研究によれば、人間は寒さを感じると血管が収縮し、血圧が急上昇します。
これが脳卒中や心筋梗塞の引き金となります。さらに、避難所のトイレが不衛生だったり寒かったりすると、人は水分摂取を控えるようになります。
その結果、血液がドロドロになり、血栓ができやすくなるのです。
根本昌宏教授は、「真っ暗な体育館での雑魚寝は、周囲に気を遣って身動きが取れず、さらにリスクを高める」と、心理面と生理面の両方からその危険性を指摘しています。
冬の災害で命を守る「厳冬期災害演習」
厳冬期災害演習とは何か
マイナス10度から20度にもなる極寒の環境で、暖房や電気のない避難所生活を実際に体験し、課題を抽出する日本唯一の本格的な演習です。
根本昌宏教授が2010年頃から継続している「厳冬期災害演習」は、参加者が実際に冬の体育館に一晩泊まり込むという過酷な内容です。
根本昌宏教授の指導のもと、参加者はブルーシート一枚の状態から、どのようにして体温を維持し、夜を越せるかを実体験します。
この演習を通じて、「夏場のマニュアルは冬には通用しない」という冷徹な事実を突きつけることが目的です。
行政・医療・福祉が連携する訓練
自治体職員、医師、看護師、そして福祉関係者が一堂に会し、それぞれの専門知識を組み合わせて「冬の避難所運営」をシミュレーションします。
単に泊まるだけではなく、根本昌宏教授は参加者に役割を与え、避難所の開設から運営までを経験させます。
例えば、保健師は避難者の健康チェックを行い、行政職員は物資の配分を管理します。
根本昌宏教授は、特に「車中泊」を選択する人々へのアプローチも重要視しており、マフラーが雪で埋まることによる一酸化炭素中毒のリスクなど、現場でしか気づけない注意点を共有しています。
ライフライン停止を想定した避難所体験
停電で暖房が止まり、水も出ない状況下で、段ボールベッドやカセットガスコンロなど、限られた資機材だけで暖を取る訓練を行います。
根本昌宏教授は、演習の中で「温かい食事」の重要性を説いています。
寒い中での冷たいおにぎりは、体温をさらに奪うだけでなく、精神的な孤独感を深めます。
演習では、簡易調理器具を使った炊き出しや、足浴による末梢血管の温めなど、具体的かつ即効性のある対策が試されます。
根本昌宏教授は、「知っている」と「できる」の間にある大きな溝を、この演習を通じて埋めようとしているのです。

災害があった時に、「一回やったことある」という経験の貯金があることは重要ですよね。特に緊急時に中心となって動かなければならない立場の人にとって、演習はめちゃくちゃ大事!
避難所環境の課題と防災の最前線
体育館での雑魚寝が生む健康リスク
硬く冷たい床での雑魚寝は、床からの伝熱で体温を奪うだけでなく、床近くに漂う埃やウイルスを吸い込みやすくし、肺炎のリスクを増大させます。
根本昌宏教授は、日本の避難所の代名詞とも言える「体育館の雑魚寝」を強く批判しています。
特に床から30cmの高さは、人が動くたびに塵やウイルスが舞い上がる「ハウスダストゾーン」です。
根本昌宏教授は、この環境を改善するために段ボールベッドの導入を強く推奨しています。
ベッドを使用することで、埃の吸入を防ぐだけでなく、立ち上がり動作が楽になり、高齢者の身体不活動(動かないことによる衰え)を防ぐことができるのです。
避難所運営の理想と現実
理想はT(トイレ)・K(キッチン)・B(ベッド)の整備ですが、現実は資機材の備蓄不足やスペースの確保といった高い壁に阻まれています。
根本昌宏教授は、イタリアなどの海外の避難所事例と比較し、日本の避難所の「質の低さ」を指摘しています。
海外では大型テントの中に簡易ベッドや温かい食事を提供するキッチンカーが即座に配備されますが、日本では依然として「我慢」が美徳とされる傾向があります。
根本昌宏教授は、自治体に対し、平時からの備蓄だけでなく、民間業者との優先供給協定の締結など、スピード感のある対応を求めています。

「みんな我慢しているから」という発想に陥りがちな日本人だからこそ、避難所の質の低さがずっと変わらなかったとも言えますね。避難所のあるべき姿をひとつの学問として確立させようとしている動きに頭が下がります。
災害関連死を防ぐための取り組み
避難者のスクリーニング(体調の早期把握)を強化し、必要に応じて福祉避難所やホテルなどの「二次避難」へ繋げる仕組み作りが進められています。
根本昌宏教授の提言を受け、多くの自治体で「災害時健康調査票」の活用が進んでいます。
これには、持病の有無だけでなく、最後にいつ食事を摂ったか、トイレに何回行ったかなどの項目が含まれます。
根本昌宏教授は、「災害関連死は、個人の体力の問題ではなく、社会のシステムの欠陥によって起こるものだ」と説き、コミュニティ全体で高齢者や障害者を見守る体制の構築を支援しています。
ガイアの夜明けで紹介された根本昌宏教授の活動
番組で取り上げられた災害関連死の問題
テレビ東京系の経済ドキュメンタリー「ガイアの夜明け」では、根本昌宏教授の視点を通じて、避難所の劣悪な環境が命を奪う実態が全国に放送されました。
番組(2020年3月13日放送、および近年の特集)では、東日本大震災や熊本地震のデータを引き合いに出し、なぜ震災から数ヶ月経っても死者が増え続けるのかという謎に迫りました。
根本昌宏教授は、避難所のプライバシー確保のためにカーテンを引くことが、逆に体調急変の発見を遅らせるという「ジレンマ」についても言及。
科学的な知見を経済や社会の視点から描く番組のスタイルは、多くの視聴者に「防災は他人事ではない」と強く印象付けました。
厳冬期災害演習の現場
カメラが潜入した演習現場では、吐く息が白くなる体育館で、参加者たちが必死に暖を取る姿や、根本昌宏教授の鋭い指導が映し出されました。
番組では、マイナス10度以下の極寒の中、エンジンを切った車内での体温変化を計測するシーンなどが紹介されました。
根本昌宏教授が参加者に対して「このままでは数時間で低体温症になります」と厳しく告げる場面は、冬の防災対策の緊急性を象徴していました。
また、最新の断熱マットや簡易テントなどの防災グッズが、いかに劇的に環境を変えるかという検証結果も公開され、大きな反響を呼びました。
防災意識を高めるためのメッセージ
根本昌宏教授は、番組の最後で「備えは、自分だけでなく大切な人を守るための愛である」という趣旨のメッセージを投げかけました。
防災は面倒でコストがかかるものと思われがちですが、根本昌宏教授はそれを「生きるための技術」として肯定的に捉えています。
根本昌宏教授は、今後もメディアを通じて、現場の声を政策や市民の行動に変えていく活動を続けると語っています。
まとめ|救えたはずの命から得た知見を無駄にしない取り組み
根本昌宏教授は、寒冷地という特殊な環境下での命の守り方を研究し、日本の防災対策に「生理学」と「現場感覚」を注入した先駆者です。
災害関連死という、目に見えにくい被害を防ぐためには、私たち一人ひとりが避難生活の過酷さを正しく理解し、平時から備えておくことが欠かせません。
「厳冬期災害演習」で得られた教訓は、冬の北海道だけでなく、全国のどこで起きるかわからない災害においても、私たちの命を救う道標となるはずです。
根本昌宏教授が提唱する「人の尊厳を守る防災」を、今一度自分のこととして考えてみてはいかがでしょうか。


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